福岡市が収容した犬猫の2019年度の殺処分数が、病気などでやむを得ない場合を除いて初めてゼロとなった。譲渡可能な犬猫の殺処分は5年前まで年間300匹を超えていたが、その大半を占めていた授乳期の子猫をボランティアが一時的に預かった後、動物病院などが引き継いで譲渡を仲介する市独自の取り組みが奏功。官民が連携して小さな命を守る地道な活動が実を結んだ。
福岡市では、市民が保護するなどした犬猫は、市東部動物愛護管理センター(東区)に持ち込まれる。19年度の収容数は574匹。犬の多くは元の飼い主や譲渡先が見つかるが、難題は子猫だった。
子猫は収容数の5割前後を占める上、頻繁に授乳や排せつの世話が必要。限られた職員では対応できず、これまではほとんどが殺処分されてきたという。
このため市は16年から、生後間もない子猫を市民が一時的に預かるミルクボランティア制度を開始。生後約2カ月まで育ててもらい、そこから譲渡につなげる試みだ。現在は一般家庭を中心に約60組が協力。体調が悪化した時は市獣医師会が支援する。
ミルクボランティアの役目が終われば、子猫は主に獣医師会所属の動物病院が預かり譲渡を仲介。昨秋からはペットの美容室やホテルも仲介を協力する譲渡サポート店制度も始まった。
この、命をつなぐ善意のリレーは徐々に広がり、譲渡件数も年々増加。昨年度に飼い主が見つかった子猫は約70匹に上った。従来のセンターでの譲渡と合わせ、譲渡が見込める犬猫の殺処分ゼロを達成した。
一方で、センターが収容した時点で、病気などで譲渡困難と判断された犬猫は殺処分を余儀なくされる。昨年度は約230匹に上り、野良猫が生んだとみられる子猫が大半という。
市生活衛生課長で獣医師の椿本聡さんは「やむを得ない殺処分を減らすため、飼育する以上は飼い主に責任を持って育ててほしい」と訴える。
2020/5/10 6:04 (2020/5/11 13:40 更新) 鶴善幸著
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